“手のひらに、心の安全基地を”──私がモバイル愛着再構築モデル(MARM) を作った理由

人間関係や自分自身に悩み続けてきた私が、自分の経験を元に生み出した独自のセラピーモデル。

それが「モバイル愛着再構築モデル」(Mobile Attachment Reconstruction Model:MARM)です。

このモデルがどんな背景で生まれ、どんな想いを込めているのか、その物語をお伝えします。

愛着の与える影響

愛着の傷はどうやったら癒せるか?

これは心理の世界でもとても注目されているテーマです。

愛着とは、人と人との間に生まれる「心のつながり」のことです。

子どもの頃に親との間で、しっかりとした愛着が築かれると、 「自分は大丈夫」「他者は信じられる」そんな安心感を持って育つことができます。

でも、もしその愛着が築かれなかったら?

「自分は愛されない」「他者は信じられない」 そんな感覚が心の奥に残り続けて、それが生きづらさや孤独感、自己否定のもとになってしまうことがあります。

自分を好きになれない、恋人や身近な人を信用したいけど信じられない……そういった苦しみの背景には、愛着トラウマが関わっていることも多いです。

実際に、愛着トラウマを持つ方は、うつ病など心の病になりやすい。という調査結果も存在します。

うつ病だけでなく、恋愛依存や共依存、大人の愛着障害といった様々な状態の根底には、愛着トラウマが存在していることも少なく在りません。

しかし一方で、愛着トラウマを持つ方の中には、従来のカウンセリングや認知行動療法だけでは効果が十分に感じられない方もいる、という報告も多くあります。

それを痛感したのは、他でもない、私自身の経験からでした。

私のストーリー

実は、私自身も愛着トラウマを抱えています。子どもの頃の家庭環境や、学校でのいじめなどが原因で、心に傷を抱えていました。

自己肯定感が低く、周りの顔色を伺い、「嫌われてないか」「怒られないか」「自分はこれじゃだめなんじゃないか」そんな風にビクビクしながら日々を過ごしていました。

こんな自分を変えようと思って、自己啓発として、副業でいっぱい稼ごう。とか彼女を作ろう。みたいに頑張り続けたこともあります。

だけど結局、副業が上手くいっても、「次に失敗したらどうしよう」って不安になり、彼女が出来ても、「振られたらどうしよう」って不安ばかりで……

結局自信はつかず、「自分なんかダメなんだ」ってますます落ち込む日々でした。

そして30歳のときに、ついにメンタルの病にかかり、会社を休職することになりました。

メンタルクリニックに長く通院しましたが、医師は事務的に感じられ、温かみが得られず、信用することが出来ませんでした。

認知行動療法のグループセラピーを受けたこともありますが、スタッフやグループのメンバーを信用できず、その中で自分を表現することが出来ず、結局うやむやにセラピーを終えてしまいました。

他者が怖い、信用できない。私にとって、病院やグループセラピーは敷居が高すぎたのです……。

さらに、治療の場は日常から切り離された世界です。治療の場でいくらスッキリしても、結局日常は孤独でつらい。これでは私の日常は何も変わらない……そんな風に絶望しました。

その後私は、セルフケアのために大学で心理学とカウンセリングを学び、信頼できるカウンセラーさんとのつながりを通して、心の傷を癒やすことに成功しました。

そして、私の知識と経験を元に、「私と同じような方を救いたい」と考えて、カウンセラーとして活動を始めたのです。

スマホ越しの関係が愛着を築く

私がスマホを使ったカウンセリングをしているのは、私自身が感じた絶望や孤独感がきっかけです。

病院や対面カウンセリングは敷居が高く、しかも日常そのものを癒やす実感が中々得られない。そこで私が目をつけたのが、私達が常に持ち歩いているスマートフォンでした。

スマホは私達にとって日常そのものです。そのスマホでセラピーが出来たら、日常そのものを癒やすことが可能なんじゃないか。そう考えたのです。

病院やカウンセリングルームじゃなくて、 家にいるときも、通勤電車の中でも、夜ふと不安になったときでも、いつでもどこでもセラピーが行き届く。

スマホ越しの小さなLINEのやり取りの積み重ねが、絆を作り愛着の傷を癒やしていく——
それがMARMの考え方です。

愛着は言葉で癒せるのか

ただし、スマホ越しの関係は、言葉だけの関係、実際に会うことのない関係です。

では、言葉だけの関係で愛着の傷が癒せるのか?これが私の最大の課題でした。

この課題に対するヒントとなったのが、心理学の関係フレーム理論(RFT)という考え方です。

私のモデルには、愛着理論と関係フレーム理論という2つの理論が土台になっています。

難しい説明は省きますが、関係フレーム理論は「言葉と言葉のつながり方が、私たちの感じ方や行動を形づくっている」ことを説明する心理学の理論です。

たとえば、
「私はダメな人間だ」
「私は頑張り続けないと価値がない」

こうした“思い込み”の多くは、過去の人間関係の中で、繰り返し言葉を通して「関係づけられてきたもの」です。

つまり愛着の問題も、“言葉でつくられた関係性の意味”のゆがみだと考えることができます。

そして、そこに希望があります。

言葉によってゆがんだ関係性は、言葉のやりとりによって再び癒していけるのではないか。これが、モバイル愛着再構築モデルの中心にある視点です。

さらに詳しい理論的背景はこちら(専門家向け)

言葉のやりとりでパターンを変える

このモデルでは、LINEなどを使って、日々のやりとりを重ねていきます。

たとえば、

・毎日の気づきを日記として書いたり
・感じたことを感じたままにLINEで送ったり
・通話カウンセリングで1ヶ月の気づきを振り返ったり

こうした関わりを続ける中で、あなたの心に根づいた「私は○○だ」という苦しい意味づけに、“あたたかく、少しずつ新しい言葉”が重なっていきます。

たとえば
「私はがんばらなきゃ価値がない」→「私はありのままでも大丈夫」

このように、新しい言葉の関係があなたの中に芽生えたとき、私達は安心して自分や誰かと関わっていけるようになるのです。

言葉の力を、癒しの力に

私は、言葉には力があると信じています。

SNSの一言が、誰かを深く傷つけることもあれば、見知らぬ人の言葉が、人生のどん底で光になることもある。

きっとあなたも、そんなふうに“言葉で救われた経験”があるのではないでしょうか。

私たちの手のひらにある、小さなスマートフォン。その中にある言葉のやりとりには大きな力がある。

だからこそ、私はこの力を、人と人との絆――愛着を再構築するために使いたいのです。

手のひらに、心の安全基地を

これが私のスローガンです。

あなたが手に持っているスマホが、あなたにとって安心出来る場所になれば、あなたの日常は少しずつ温かく変わっていくはずです。

かつて私が感じた孤独と絶望。あなたがそこから抜け出せるように、スマホを通してそっと寄り添い続けます。

私との言葉のやりとりが、あなたの過去を癒し、未来を歩む力になりますように。

これからも一緒に歩んでいけたら嬉しいです。

モバイル愛着ケアカウンセラー 川谷 虎鉄