「頭ではわかっているのに、どうしてもこの関係がやめられない」
「相手のことばかり考えて、自分を犠牲にしてしまう」
「大切にされていないのに、なぜか離れられない」
そうした苦しみの背景には、「共依存」という関係性のパターンがあるかもしれません。
共依存とは、他者とのつながりの中で“自分を見失ってしまう”状態を指します。
一見、相手を思いやる行動のように見えて、実は“自分の不安”を埋めるために相手に尽くし続けてしまう。
そして、その結果として「しんどいのにやめられない」「しんどいけど相手がいないと不安」といった感覚に悩まされることになります。
こうした共依存の背景には、「愛着トラウマ」が関係していることも多いです。
そこで今回から、『共依存と愛着トラウマシリーズ』として、複数回に分けて解説していきます。
共依存と愛着トラウマの関係に焦点を当て、「なぜこの関係が手放せないのか?」「どうすれば、苦しいパターンから抜け出せるのか?」を一緒に考えていきたいと思っています。
あなたが「自分を犠牲にしない関係」を築いていくために、まずは、自分の中にある“共依存のメカニズム”をやさしく見つめることから始めていきましょう。
共依存とはなにか?
共依存とは、一言で言えば「他者との関係の中で、自分を見失ってしまうこと」です。
相手に尽くしすぎてしまったり、相手の気分や行動に振り回されてしまったり、自分の気持ちよりも相手のニーズを優先してしまう。
そんな関係性が続くうちに、「自分はどうしたいのか」がわからなくなり、心も生活も相手中心に回ってしまう――それが共依存の特徴です。
共依存的な関係では、一見「思いやり」や「献身」のように見える行動が、実は「自分の不安を埋めるため」に行われていることもあります。
「見捨てられたくない」「必要とされたい」――そんな思いが強く働くことで、相手に必要以上に合わせたり、コントロールしようとしたりしてしまうのです。
こうした関係が続くと、自分の感情や価値観がどんどん曖昧になり、「本当の自分」がわからなくなっていきます。
それでも関係を手放すことが怖くて、ズルズルとつながり続けてしまう。そこに苦しさと矛盾が生まれていきます。
共依存と愛着トラウマの関係
共依存の背景には、単なる「性格の問題」や「気の使いすぎ」といった表面的な説明では済まされない、深い心の傷が関係していることがあります。
その中でも特に重要なのが、「愛着トラウマ」です。
愛着トラウマとは、子どもの頃に親との関係の中で、安心・信頼・甘えといった“基本的な絆”が十分に育たなかったことによって生まれる、心の深い痛みです。
たとえば──
・困ったときに頼れなかった
・悲しいときに受けとめてもらえなかった
・いつも「いい子」でいなければならなかった
・気分がコロコロ変わる親に振り回されていた
こうした経験があると、「そのままの自分では愛されない」というルールが心に根づいてしまいます。そして大人になってからも、人との関係で“無意識に”そのルールに沿って行動してしまうのです。
共依存は、まさにそのひとつの現れです。
たとえば、「相手に尽くしすぎてしまう」のは、「見捨てられないように、役に立たなきゃいけない」という無意識のルールです。
つまり、共依存は「性格の問題」ではなく、過去の経験から身につけた“人との関わり方”のルールなのです。
ありのままの自分では、親から愛されないと感じた。そこから生まれたルールが、親以外の他者にも適応されてしまった状態なのです。
共依存を手放せない理由
共依存的な行動を止めたいけどやめられない…
それは、その行動が「苦しい」ものであると同時に、どこかで“うまくいく方法”だと信じているからです。
幼いころに身につけた「自分さえ我慢すればうまくいく」「役に立てば、きっと愛される」といった対人関係のルール。
それは、当時のあなたにとっては、生き延びるために必要な“知恵”でもありました。
だからこそ、たとえそのルールが今の自分を苦しめていたとしても、なかなか手放すことができないのです。
むしろ、ずっとそれで人とつながってきたからこそ、「それ以外の関わり方がわからない」「ルールを変えたら、もっと傷つくかもしれない」という恐怖さえあるかもしれない。
子どものころのあなたは、確かにそのルールに守られて、家庭内を生き抜いてきたのだから。簡単に手放せないのも当然なのです。
私の行っているカウンセリングの理論では、
こうした行動を「あなたなりに必死で人とつながってきた証」として、大切に扱います。
それは、誰にも教わらなかったけれど、あなた自身が試行錯誤してたどりついた“関わり方”だったのです。
だから、「まだ手放せない自分」も、責めなくて大丈夫です。
まずは、「そうやって私は人とつながろうとしてきたんだ」と、今までの自分にねぎらいを向けるところから始めていきましょう。
終わりに まずは「理解」からはじめよう
今回は、共依存を手放せない理由についてお話しました。
共依存を抜け出せないのは、決して「ダメな自分の証」ではありません。
それは、かつて誰かとの関係の中で、“必死に生き抜くために身につけた、生き方の知恵”でもあります。
だからこそ、すぐに「やめよう」とせずに、「なぜそうしてしまうのか?」とやさしく振り返ることから始めてみてください。
あなたの中にある「誰かとつながりたい」という願いを、責める必要はないのです。
愛着トラウマと向き合い、そこから生まれたルールを見つめることができれば、少しずつ新しいルールを育むこともできます。
そうすれば、新しいルールで安心できる関係を大切な人との間に築くこともできます。
まずは、あなた自身の愛着の傷と向き合うことから始めていきましょう。
このチャンネルでは、あなたが愛着の傷と少しずつ向き合えるよう、様々な角度からお話していきます。
次回のテーマは、「共依存と自分軸」です。
自分軸を育てることは、愛着トラウマを癒す上で必要不可欠です。ぜひ次回の動画もご覧ください。
本日は、以上です。