コラム

なぜありのままで安心できないのか~愛着から紐解く条件付けの安心~

今回のテーマは、『なぜありのままで安心できないのか』です。

頑張っているのに中々安心できない。
頑張って成果が出た瞬間だけ安心できる。
けど、上手くいかないと強い不安が湧き上がってくる。

これは、性格の問題ではありません。

今回は、心理学の愛着理論をもとに、安心できない仕組みをお話します。

 

愛着とは:生き延びるための仕組み

愛着理論は、ボウルビィという心理学者が提唱した理論です。

ここでいう愛着というのは、心のつながりという意味だけではなくて、もっと原始的で、生きるために必要な仕組みです。

簡単に言えば、子どもが生きるために、守ってくれる存在のそばにいようとすること。それが愛着です。

これは人間だけの話ではなくて、動物にも似たような仕組みがあります。例えば、生まれたての鳥が、最初に目についた動くものの後をついて回る。そんな話は聞いたことがないでしょうか?

これも、“近くにいるほうが安全だから、近づく”という仕組みがあるということなんです。

親鳥のそばにいれば、守ってもらえる。食べ物ももらえる。生きていくためには、親に近い場所にいる必要がある。

この鳥の例のように、「安全のために近づく」という働きが、愛着のです。

 

人間の愛着とは

では、人間にとっての愛着とはなにか? もちろん、生きるための仕組みであることには変わりありません。

ただ、人間には鳥とぜんぜん違う特徴があります。それは、”人間の赤ちゃんは生まれてすぐ動けない”ということ。

だから自分から親に近づくのではなく、親に来てもらう必要があるんです。

図にするとこんなイメージです。

泣いたら親が来てくれる。微笑んだら親が抱きしめてくれる。
そうやって親が近づき自分を助けてくれる。この体験が、人間にとっての安心の土台になります。

つまり、人間にとって「見捨てられる」ことは、ただ寂しいとか悲しいではなくて、生死に関わる問題として身体が反応してしまうのです。

だから見捨てられ不安は、本能レベルで強い恐怖を生み出します。子供にとって、呼んだら親が来てくれるかどうかは、文字通り、生きるか死ぬかに影響するから。

そして、愛着は子供の頃の親との関係だけではなく、その後の人間関係のパターンを作っていきます

ボウルビィは、『ゆりかごから墓場まで』なんて表現をしていたようですが、それだけ、愛着はあらゆる人間関係--例えば、友人、同僚、恋人、家族との関係の基礎を形作っていきます。

あなたがもし、見捨てられ不安が強い。頑張らないと安心できない。
そういった悩みを持っているとしたら、それは、それだけ安心できない環境で過ごしてきたからかもしれません。

そして、生存に関わる恐怖だからこそ、「気のせい」だと思い過ごそうとしても、ポジティブに考え直そうとしても、気持ちを切り替えることが中々できないんです。

それは、火災報知器が鳴っている中で、そんなの気のせいだろって火災報知器を無視しようとするものだからです。

 

安心を決める“親の予測可能性”

愛着が安定するかどうかに大きく影響を与えるのが、親が“安定してそこに居てくれること”です。

これは専門的には予測可能性と呼ばれます。

自分が泣いても笑っても、同じように温かく迎えられる。どんな自分でも親は来てくれる。関係は続く。これが無条件の安心となって、安定した愛着を育んでいきます。

一方で、親の態度が日によって違う、機嫌で変わる、条件がつく。
例えば、同じように甘えようとしても、日によっては怒られたり。
他には、良い子のときだけ相手をしてもらえる。
泣いたり感情を出すと叱られる。無視される。

こういった態度が繰り返されると、安心は条件付きとなり、不安定な愛着が形成されていきます。

 

「私は大丈夫?」チェックの誕生

不安定な愛着の中で子供は、「どうやったら見捨てられないか?」を必死で考えるようになります。

必死で良い子でいる。ダメな自分は隠す。
「今の私は大丈夫?」そんな風に自分をチェックし続けることになります。

これはすべて、見捨てられないための生存本能です。悪い子でいれば見捨てられる。見捨てられたら生きていけない。だから良い子でいることは、この中では生きていくために必須の条件になる。

これが大人になっても続いている。

だから頑張り続けるしかなくなってしまう。頑張って良い自分でいるときだけ、生きていける。

失敗する、怠ける。そうすると見捨てられる。見捨てられたら生きていけない。だから心はアラートを鳴らし続ける。火災報知器のように。

これが、頑張らないと安心できない心の仕組みです。

 

 終わりに あなたは弱いのではない

今回は、愛着理論の観点から、あなたが頑張らないと安心出来ない、見捨てられ不安が消えない理由をお話しました。

あなたが安心できないのは、努力不足ではありません。不安が強いのは、生き延びるために必要だったからです。

見捨てられないように「私は大丈夫?」とチェックし続けることは、不安定な環境の中で生き延びるために、必要な守りだったんです。

これは性格の問題ではなく、環境の問題です。だから、あなたが変わる必要はないのです。

ただ、一貫した関係がひとつでもあれば、チェックは自然と緩んでいきます。
安心は、あなたの内側から作るものではなく、関係の中で安定していくものですから。

それでは、今回は以上です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

モバイル愛着ケアカウンセラー 川谷虎鉄でした。

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